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4/30/2011

間違ったPONPONパタンの効用

新しく担当している大学1年生のクラスで、単語のポンポンパタンを書かせる、というのを導入した。『心・技・体』の読者はご存知のように、単語の音節を o で表記し、第1強勢がある音節のみ大きなO で書く、というものである。

どこが強いかもそうだが、その前に、そもそのその単語がいくつの「ポン」(音節)で成り立っているのか、を意識させるのが狙いである。

で、promote という語が出てきたので、聞いてみた。

「これはポンポンいくつかな?」

すぐにある積極的な学生が、

「3つ!」

と来た。こういう時に、すぐに訂正してはもったいない。とてもよい教育の機会なのである。

「おお、いいね。じゃあその3つと思うのは、どう区切ってそうなると思うのか言ってみて」

「プロ」+「モー」+「ト」

すばらしい。まさにこういう答えを待っていたのである。うってつけだ。

「ああなるほどね。確かにね、カタカナ発音で、『プロモート』と言えば、ポンポンは3つあるんだよね。pro + mo + toh ね。でも実は英語の発音は、 

pろ  モウt

なので、二つ。oO (ポポン)ね。

これは、プロモート ていう発音をしている限りは分からないので、きちんと pro   mote  って言って初めて分かるんだ。だから正しいポンポンを考えることは、英語らしい正しい発音をすることにつながるんだよ。要らない母音をつけていると、わからないからね。」

ふむふむ、なるほど、という表情でうなずく顔があちらにもこちらにも。

こうやって pon pon パタンの誤りから学んでゆくのである。

4/28/2011

高校での音読指導のコツ

きのうゼミの学生に高校での音読の時間配分について質問されたのですが、それに関連して特に高校での音読指導について彼らに言おうと思うことを書いたので、ここにもポストしておきます。

reactive より proactive
生徒の発音を聞いて、それに基づいてフィードバックする(reactive)は大切だが、日本人がどこでどいう間違いをするかはほぼ100%予測がつくのだから、読ませる前に前もってそれを指摘して(proactive)から読ませるほうが、意識が高まっていいし、一度分、無駄がない。また慣れてきたら、注意すべき点を生徒に予め言わせてみるのもよい。これから読む部分に含まれる thに全部色をつけさせてから読むのに入る、などもよい。

Gradually and cumulatively
慣れない筋肉習慣を、いちどにいくつも行うのは無理。一つできるまでは一つに集中。一つできたら、もうひとつも同時に。二つできたら、3つめも同時に、と累積的に。3つめができたら一つ目が戻ったら、根気よく、また一つづつ。だんだんできる。

正しさよりカッコヨサ
その発音は間違っている、正しいのはこうだ、というより、それはあまり英語っぽくないよ、ダサいよ、カッコ悪いよ、英語らしいのはこうだよ、カッコイイよ、というソフトタッチがよい場合が多い。どんな生徒でも、心のなかでは、できれば英語らしくかっこ良く言える自分のほうが好きだ。

自分で音読できる力を
すべての題材に、予めモデルを示してやることはできないし、それがなければ読めないのでは永遠に自分で読めない。こういうスペリングはこういう音になる。こういう種類の単語は文の中では強く長く読まれ、こういう種類の後は弱くなる、etc という、ルールを徐々に教えよ。ある程度の段階になったらモデル(=正解の読み方)を示す前に、自分の力で読ませてみて、それをモデルでチェックする、のも必要。

イイカゲンに全部、でなく、きちんと1パラグラフ
いいかげんに300語を一回読ませるなら、きちんと50語を6回読ませよ。そして漫然とでなく、1回目より2回目、2回目より3回目が英語らしくなるように、コーチせよ。きちんと50語が読めるようになった生徒は、あとの250語も読めるようになっているはず。また、そうなるように、ルールを教えよ。

一斉音読とペア音読の間をいったりきたりせよ
モデルのあとについての一斉音読は、作業としてはしんどい。せいぜい5か10分まで。あとはペア音読にうつり、生徒の間を回って、ちょこちょこ、指導をする。いくつか共通のマズイ点が分かるので、そこで、またワンポイント的に「ちょっと聞いて~!」といって、今の点を一斉音読で15秒程度アドバイスし、またペアに戻す。これを繰り返す。

いつでも同じスタンスで
theをザと言うのを許さない、子音の後に不要な母音を入れるのを許さない、という態度を、音読指導だけでなく、内容理解、ライティング、スピーキング、リスニング、文法解説など、あらゆる場面で堅持すること。ぶれない態度がなにより大事。これをしないと、すべてが無駄になる。

4/24/2011

different さえまともに発音できない

日本語と比べた時の英語の音声的特徴の一つは、よく知られているように母音字の音価が環境によって大きく変化することである。

日本語の「あ」「い」「う」「え」「お」は強く発音しようが弱く発音しようが「あ」「い」「う」「え」「お」だが、英語の a, i, u, e, o は強勢を受ける場合のみはっきりとした音価をもち、強勢がないときはあいまいな音価しかもたない。

その根本的な特徴を多くの英語教師が把握していないし、その結果生徒にも伝わっていないということを感じるひとつの単語が

different

である。

dif-fer-ent

母音字につられて日本語式に、

ディファレンt

と発音する者が如何に多いことか。

発音記号を確かめるまでもなく、第2音節、第3音節には強勢がないのだから、

「ファ」「レンt」

とはっきりした音価をもつはずがないのである。

ディフルンt

というイメージが正しい。

そして、これは different だけのミミッチイ話ではなく、すべての単語に通ずる話であって、一事が万事である。

こういう点がまともかどうか、がその人の英語が英語らしく聞こえるか英語らしく聞こえないか、を決める大きなファクターになっているのである。そしておそらくリスニングにも影響しているのだと考えられる。

たかが different されど different。

In English, a vowel letter is pronounced with full vowel quality only when the syllable containing it receives stress.   Most Japanese learnes of English inadvertenly use the Japanse system of pronouncing all the vowel letters with full vowels, resulting in speech sounds that do not sound very much like English.  The case in point is how they prounce "different."  Do in Rome as the Romans do.  Speak in English as English speakers do.

4/23/2011

understand が言えない英語専攻1年生

また新しい大学1年生を担当しているが、昨日は understand という単語を誰一人まともに発音できないという笑える経験をした。

un - der - stand

それぞれの音節を形成する母音は すべて異なるのであって、決してすべて日本語の「ア」段 の 「ア」「ダ」「タ」 ではないのである。

しかし、昨日はそれを指摘する段階にすら至らなかった。全員、UNderstand というストレスで言っていたからである。

話題にしているのはうちの学部のなかでも最もペーパーテストが優秀な英語専攻の新入生なのである。

情けな..。というか、オモロ! こういうことがあるとまた「中高教員しっかりしろよ」という例のフレーズを出したくなるのである。

そして、腕が鳴るなりホウリュージ。この連中をたたき直して優秀な英語教師にして世に送り出し、少なくとも一隅においては負の連鎖を絶ち切ってみせる。

4/04/2011

リハビリと英語教育

腕相撲で骨折した右腕のリハビリを先週から始めた。初期状態としては、6週間の固定のせいで、(1)肩関節は腕が水平まで上がらず、(2)腕が伸びず(160度までが最大伸長)、(3)曲げられない(90度までが最大屈曲)、というものだった。

ウェブで調べたりしながら自分なりに5日間ほどやり、その上で今日はじめて理学療法士の指導を受けた。感じたことが二つある。

(1)今までできなかったことができるようになった!という「上達」「改善」感覚が、もっとも心強いし、さらに努力をしようという最大の動機付けになる。

(肘が曲がらないから)昨日まで親指で鼻を触るのが限界だったのが、今日は日本の指で口元まで触れた、とか、3日前まではシャツのボタンの下から3つめまでしか留められなかったのが、今では下から4つ目が楽に留められる、といった、確かに前進している、という感覚は何ものにも代えがたく嬉しい。それがあるからこそ、基本的にはある程度の痛みをワザと感じる所作を一定時間持続する、というのを繰り返す営みであるリハビリテーションという作業を1時間以上も続ける気になる。

(2)先生・指導者の言うとおりにやったら、自分では超えられなかった壁を超えられた!という体験は、プロの指導者に対する絶大な信頼感を生むし、逆にそういうアドバイス・指導ができてこそのプロフェッショナルであろう。

肘が屈曲できないほうは、自分なりに少しずつ曲げ角度を大きくできていたのだが、伸長できないほうは感覚としてもまったく変化がなかった。それが今日M先生にもらったアドバイスを半日実行しただけで、いままで何週間もずっと伸びなかった肘が、明らかに少し175度くらいにまで伸びたのである。

英語教育でもまったく同じで、生徒にはこういう思いをさせてやれる指導者でありたい。

4/02/2011

グルグルさせる文は厳選せよ

教科書本文をすべてグルグルさせようとするのは得策ではないし、必要ない。時間をかけて暗唱、というか、何も見ずに言えるようにさせるわけだから、それだけの価値がある行、文を選ばねばならない。

should be worth it

価値があるというのは、発音の練習するのに適度な負荷があり、かつ、内容的に暗記するに足る、という意味。

ちなみに、Lady Gaga の Born this way で私が高校生にグルグルさせたのは、

1. There's nothing wrong with loving who you are.

2. Don't hide yourself in regret. Just love yourself and you're set.

3. I'm on the right track baby; I was born this way.

4. There ain't no other way; I was born this way.

5. Don't be a drag, just be a queen, whether you're broke or evergreen.

6. Whether life's disabilities left you outcast, bullied, or teased, (rejoice and love yourself today.)

どれも素晴らしい。すべて、言えて、書けるようにするだけの価値が十分あるラインばかりだ。