大東文化大学
英語教員養成担当
靜 哲人
YouTubeに公開されている以下の授業の、担当者の英語発音について論評する。
はじめに
ことさらに、一高校の一英語教師を取り上げて、このように公開で批判するのはいかがなものか、大人げないのではないか、という気持ちはある。
しかし、これは授業をした側(大分県公立学校および教育庁)が自らYouTubeに公開した映像であり、かつ県立高校の授業であり、教師は公務員である。そしてこの授業の発信もとの官庁である大分教育庁が、キャプションで、
学力向上支援教員・指導教諭らによる優れた授業をノーカットでお届けする「シリーズ授業まるごと!」
として、この授業を endorse している、となると、日本の英語教育の質の向上という公益を願うものとして、看過できない。
このように、公開の場で、明示的に批判し、その問題点を指摘することは、公益にかなうものであり、価値があり、適切であると判断し、ここに意見を公開する。
意見(結論):
この授業担当者の発音は、あまりにも不適切であり、その1点だけで、「優れた授業」とはとてもいい難い。授業の内容や運びがどうであっても、それをすべて帳消しにするほどの、質の低い発音であり、英語教員であるとは信じたくないほどのレベルである。
英語教員レベルを基準として発音を評価するならば、ABCDで間違いなくD、100点法であれば30点程度である。およそすべての音が日本語の音素であり、母音も子音も、英語音素はほとんど聞こえない。すなわちほぼカタカナそのままで「英語」による「英語」の授業を行っている。
英語教員を養成している立場として、この授業を見て「優れている」と感じるような学生を絶対に育ててはならないし、世の中の英語教師にも、この授業をみて「優れている」とおもって欲しくないと心から願う。
幸い、私の教えている学生、過去に教えた学生、私の知っている現職教師には、この授業を見て、発音の質の低さに唖然とし、憤りを感じる者はいても、「優れている」などと感じる者は皆無だろうと思われる。ただ残念ながら世の中には発音を軽視している英語教師は多いので、この公開授業がそれらの発音べたな教師たちに、「あれでもいいのだ」と、一種の免罪符というかお墨付きになってしまうことを危惧するものである。
また、この授業は2014年に公開されているが、もし現在も、同授業者がこのレベルの英語発音で授業を続けているとするならば、担当してる生徒たちに質の悪い英語発音を毎日のように浴びせているということであり、公教育の現場として極めて望ましくない状況である。その後、精進され、今はほとんどカタカナ発音での授業はしていないことを願うのみである。
また、大分県教育庁のご担当者においては、ここで指摘したこの授業の問題点を認識され、すくなくとも、これが「すぐれた授業である」という形での YouTubeでの公開は、日本の英語教育の質の向上という公益に鑑みて、一日も早く中止されることを強く望むものである。
エビデンス(各論):
以下、最初の4分間のなかで、特に不適切である箇所をリストにした。実際に確認していただきたい:
0:47 あたり(以下全て同様)
At first のつもりで、At farst と言っている。発音もカタカナだし、しかもここは「まず」という意味なので、At first は英語として不適切。正しくは、First と言うべきだった。
0:49
ask you to change your way of thinking を sinking と言っている
from Japanese to English で、Japaneseは、ジャパnese と日本語の母音。EnglishはEngrishとLがR
というよりも、ほとんどが単にカタカナで発音している。
0:54
So, all stand up please.は、映像がなければなんと言っている聞き取れないほど不明瞭な英語。standのaもupのuも同じ母音。pleaseは完全な日本語。ひとつひとつの音を音声学的に描写するのも面倒になるくらい、ようするに、すべて日本語の音素を使って英語を話している。
0:57
So pリase take out ザ 音読 sheet .
1:06
the first paragraph ザファースパラグラフ このあたりまったくカタカナ発音で、英語教師とは思えない。
2:10
OKサードパラグラフ
2:35
OK フォースパラグラフ まったくのカタカナ発音。
3:02
Sit down プリーズ
3:11
Let me exprain today’s project ,.. Lの音がまったくできない。おそらく発音しようという意識もない。
3:17
ざ・テンプラチャー・アラウンざわーるd is..
ほんとうに、それこそ、これぞ「ザ・カタカナ英語」だ、というほどのカタカナ英語。
3:22
emission エミッション schwaがない 典型的なカタカナ発音。
3:45あたり
question クエッション・クエスチョン ションとかチョンとか言ってはいけない。schwaを使うべき。
3:46
If there were only two countries 完全にカタカナで イフ ゼアワ~
3:51あたり
developed / developing countries 完全にカタカナ発音で、デベロップ デベロッピング
3:53
So in that case が、in ザット case…
3:55
CO2を、she oh tsoo と言った。
これ以上は見ても、無駄に辛く・不快になるだけであり、ここまでで充分な発音サンプルを検証したと判断されたので、ここで視聴終了。
以上