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4/15/2020

オンラインの zoom ゼミ、やり方が概ね決まりました。

5月からの開始に備えていろいろ試行錯誤をしましたが、本日トライアルゼミを zoom で開催して、概ね行けそうな手応えを得ました。参加者は18名。

内容は、(1)TED をつかったプレゼン、(2)マーフィーの英文法の英語版 English Grammar in Use をつかったプレゼン、(3)歌のプレゼン、です。以下、詳細を記します。

(1)TED

教師がYouTubeを操作して、Transcript画面を利用して、音声を聞かせながら、10数カ所指定して、書き取りをさせる。一箇所につき4語程度。このとき画面共有をしていないので、教師はTranscript画面を利用してランダムアクセスでいろいろな箇所の音声を出せるが、その画面は学生には見えない。→ 学生はその書き取りはリアルに紙にメモしておき、zoom終了後 30分以内に、google formsで回答。

発表担当学生が予め提出してきた発表動画 (7分くらい)を教師が再生。ところどころ止めて、発音や英語表現上のフィードバックをする。この発表動画は学生は screencastで作成。当該のTED Talkの概要と心に残ったセリフをYouTubeを操作しながら3箇所紹介し、音読練習をさせる、様子を録画してある。

教師が、予め準備した、10数カ所の空所を設けたtranscriptを示し、空所を埋める語を書かせる。速読しないと間に合わないくらいのスピードでスクロールして提示するのがみそ。→学生は解答をリアルに紙にメモしておき、zoom終了後 30分以内に、google formsで提出。

ブレイクアウトルームにして、数分間、英語で話す練習をさせる。

注:
小テスト用紙の google formsは、汎用性があるようにすべて記述式にしておき、その日の解答提出を締め切ったら、CSVでダウンロードしてしまい、formの responseはすべて消去してしまう。これで毎週同じフォームで使える。

(2)グラマー

発表担当学生が予め提出してきた発表動画を教師が再生。ところどころ止めて、発音や英語表現上のフィードバックをする。

ブレイクアウトルームにして、グラマーの問題ページを使った、口頭のペアワークをさせる。一方が口頭で文法問題をだし、他方が教科書を見ずに答える、というもの。

(3)歌

発表担当学生が予め提出してきた発表動画を教師が再生。ところどころ止めて、発音や英語表現上のフィードバックをする。

きょうはたまたま発表担当学生の都合がわるく、リアルタイム参加はなかったが、5月から本格的に始まったならば、リアルタイム参加があるはずなので、リーダーとして全体にたいして歌唱指導をし、最後は全員で歌って終わる予定。

■3つの発表をなぜ、わざわざ予め動画を提出させるか。理論的にはリアルタイムでも可能だが、そうするとテキパキと私が止めてフィードバックが出来ない。zoomの特性で、一人が話している時に割り込んで話そうとすると、一瞬聞こえなくなったり、音声が途切れたりして実用に耐えない。その点、動画にしておけば、それを私が再生し、いつでも止めてすぐにフィードバックをすることができる。

■私としての難しさ/チャレンジは、画面共有をしてしまうと、ほとんどの学生の顔が見えなくなってしまい、ちゃんと音声が届いているのか、どういう様子なのかがまったくわからなくなってしまい、不安になりながらも、物理的距離の離れている学生たちを信じてPC画面に向かって話すのに慣れること、である。






4/12/2020

配信した動画を全員が必ず見るように仕向ける方法

オンデマンドで講義の動画を配信したとします。しかしそれだけでは、その動画を学生の全員が必ずきちんと見てくれるとは限りません。ではどうするか。

それを考えるもととして、リアル授業に関しての次のようは手法を出発点として考えてみました。中学・高校での授業を想定して書いていることに注意してください。

--------------- 以下、拙著『英語授業の大技・小技』(研究社)より引用 ---------------

5 秘技:発問すべてテスト法

授業における指名には問題点がある。

(1)答える人数の少なさ
 当然のことながら、ひとつの質問について同時に指名できるのは1名だけであり、他の全員はその時は答える機会がない。
(2)特定のものが答える
 指名せずとも皆が自発的に発言(解答)してくれれば一番自然でよいと思うのだが、指名しないとなると、どうしても答える者が偏ってしまう。
 
このような、特定の個人が答えることの限界を打破しようとして考えに考えて編み出した技が、秘技「発問すべてテスト法」である。
(1)授業開始時に小テスト用の紙を配る。

(2)「きょうの授業中にする質問はすべてテストだから、俺が質問したらすぐその答えを紙に書く。いいね〜!」(「え〜!?」)

(3)普通に授業を始める。授業を進めながら、何か質問したいことがあれば、クイズ番組風に突然「ここで問題です!」と宣言し、全体に向けて発問する。質問の種類は自分の授業スタイルと生徒の実状に即してなんでもよい。例としては:
  • 特定の単語の意味、反対語「はい!この単語の意味は!」
  • 単語の品詞「はい!このcashは名詞か動詞か?」
  • 特定の単語の発音・アクセント「はい!カタカナでいいから次の単語の発音を書く!」
  • 文アクセント「次の文で文脈からみて強く発音されるはずの単語はどれかな?さあ○をつけてみよう」
  • 文の構造「今読んだ文の、主部はどこまでかな?主部が終わるところにスラッシュをいれる!」
  • 文の構造「そうだね。ではその主部の中の、中心となる主語一語はどれかな?はい、まるで囲む!」
  • 照応関係「はい!このtheyは何を指しているでしょう?」
  • メイン・アイデア「はい、今のパラグラフで言いたいことを、日本語5文字で書く!」
などだが、生徒のレベルに応じて、発問を英語にすることもできる。

(4)答えあわせは1問ごとに行う。発問をして、生徒が必死に答えを書いている状況を見きわめながら、まあ平均して5秒くらい経過したら、「はい!」と時間切れを宣言し、答えを言う。

(5)正解が示されたら生徒は、鉛筆を赤ペンに持ち代えて、今自分の書いた答えが合っていれば○、間違っていたり書いていなければ×をつけ、また次の問題に備える。

(6)この形式を授業終了1分前まで続ける。

(7)終了1分前になったら「はい!じゃあ、そこまでだから、○の数を数えてその合計を名前の横に書く!」といい、最後に紙を回収しておわる。

 <発問すべてテスト法の良いところ>

(1)緊張感を持続できる
いつ何をきかれるか分からない、という緊張感で、昼休み直後の5時間目であろうが、居眠り者を出さない。

(2)柔軟性がある
ポイントは、授業中にする発問のすべてをそのまま小テストにしてしまう、という点にあり、その他は柔軟であり、教授法や生徒のレベルや使用言語(日本語による説明授業か、オールイングリッシュの授業か等)に縛られない。

(3)指名をする手間が省ける
私のように、(告白してしまうが)生徒の名前を覚えておくのが苦手な教師には大助かりである。

(4)生徒の理解状況がリアルタイムで把握できる
何人かの生徒の手元をのぞき込むだけで、生徒の理解度がチェックでき、その後の授業を小刻みに軌道修正できる。

------------------------ 引用終わり -----------------

 
これを動画配信に応用すると、「動画の中に発問を埋め込み、それに対する解答を提出させ、それを評価データのすべてにする」という手法に思い至ります。リアルの「発問即テスト法」と違うのは、リアル授業であれば発問して解答させたら即正解を言って採点させるのに対して、動画配信の場合は、動画のすべてを見終わってから解答を(google formsや manabaに)提出させる、という点のみです。

たとえば私の、とある講義授業では、

(1)教科教育法の教科書のあるセクションを読んで、それを要約する
(2)例文つきの単語集の、単語と例文の音声を聞き、かつその単語の英語定義を英英辞書で調べる
(3)英語発音についての教科書のあるセクションを読んで、その付属音声を聞いて発音練習する

ということをさせたいと思っています。そこで、(1)〜(3)をすべて講義動画にする(Camtasia 2019などを使用)のですが、その際、解答すべきことをすべて口頭で指示するのです。「口頭で」としたのは、指示をパワポの文字なので視覚提示してしまうと、学生が早送りしてその部分を見つけることが可能になり、動画をきちんと見ないことが考えられるからです。

90分の動画のどこかに10箇所とか20箇所とか問題指示を口頭で埋め込んでおけば、地道に90分視聴せざるを得ません。よくテレビやラジオの番組で、どこかで「合言葉」を言って、その合言葉を知っているひとだけ応募できる懸賞などがありますが、ああいうイメージです。

問題はあらゆるタイプのものが可能です。
A) 日本語で200文字程度の文章を書かせる。
B) 目標言語の単語(1語)を書かせる 
C) 目標言語の1文を書き取らせる。
D) 目標言語の指定した文(章)を音読させる。

A〜Bは google forms の小テストにすれば、とくに Bと C は自動採点が可能です。(manabaでも可能のようですが、私は使っていません)。 Dは manaba のレポートとして音声ファイルで提出させることが可能です。

そしてDの音声提出物にたいするフィードバックですが、それを次の授業の動画に組み込むのが一番簡単だと思います。リアル授業でも、何人かの提出物を取り上げて、あるいは全体に共通することがらについてコメントすることがあると思いますが、それとまったく同じことを、動画にすればよいわけです。

Dで提出された音声をPC上で再生し、それについてフィードバックしている様子、それ自体を録画してしまい、次回の授業用の動画の冒頭部分として配信する、ということです。

以上のように動画のなかに、動画を最初から最後まできちんと視聴しないと解答できない設問を組み込んでしまう、という手法をとれば、オンデマンド配信でも学生はきちんと学習してくれるのではないか、と期待しています。

4/10/2020

Wh-疑問文に関する論文が公刊されました。

Shizuka, T. (2020). Relative difficulties of L1-Japanese EFL learners face in formulating different types of wh-questions. Annual Review of English Language Education in Japan, 30, pp.65-80.

Abstract

Formulating questions is one crucial building block of communication. Regarding wh- questions, though, literature often reports that Japanese EFL learners tend to have greater difficulty correctly formulating subject questions than other types of questions. This study attempts to shed more light on this phenomenon. In Study 1, university students tried writing 50 wh-questions asking for certain pieces of information specified by underlines in source statements. The results led to a hypothesis that subject questions are a challenge only when the wh-word is immediately followed by a lexical verb but they are not particularly difficult when the wh-word is followed by a primary or model verb. Study 2 tested that hypothesis on two separate groups of university students. It also investigated the effect of explicit grammar teaching by conducting practice sessions with one group (experimental group) and not giving such sessions with the other (control group). The results confirmed that the difficulty of making subject questions is indeed moderated by the type of verb that follows the wh-word and indicated that explicit and focused practice of formal manipulation can help learners overcome the revealed weakness.

教科書を前提としない授業は教員をテストする

大学がロックダウンになると通常であれば大学内の書店で購入していた教科書が買えない。アマゾンなどで入手が可能な場合もあるが、すべての学生が教科書を購入できるとは思えない。

よって今年に関しては教科書がない学生でも参加できるというのを前提に授業を組み立てるのが無難だと思う。

この状況もまた、自分がひとりの教員として、教科書という「他力」に頼らずに、学生に何を与えることができるのか、を我々に問いかけてくる。

ある意味で、徒手空拳でなにができるのか、の勝負になってくるわけで、その教員ひとりひとりの力量の差が顕在化するだろう。

4/09/2020

オンライン授業を工夫するのは良いことだ

日本中の大学が現在、少なからぬ教員が経験したことのない非対面授業によって少なくとも前期のすべてを組み立てねばならないという状況に直面し、大混乱である。

こんな状況を望んだ者は誰もいないが、一教師としては、自分の授業スタイルの幅を一気に広げるまたとないチャンスだと捉えるのがよいと思う。まさにピンチはチャンスである。

対面ではあの手この手で学生を90分集中させられていても、それは純粋な内容だけではなく、学生との物理的な距離を変化させたり(例:教師が歩き回ったり、特定の学生に近づいたり)、学生を物理的に動かしたり(立たせたり、スキップさせたり)という、いわばプラスαの要素も使って成し遂げているわけである。

私のグルグルの威力?も、学生との物理的な距離をつめて間近で「圧」をかける、ということによる部分は無視できない。

それが90分のオンデマンド動画になると、そのプラスα要素の部分はゼロになるので、まったくの講義の内容だけでどこまで惹きつけられるのか、という勝負になる。しかも惹きつけられているのかいないのか、はもちろん知るすべがない。相手は見えないというかいないのである。

この状況はあらためて自分のストレートなトークが学生の教育に対してどこまで有効なのか、という問いを突きつけるものだ。いわば視聴者の直接見えないラジオ番組やテレビ番組を録音・録画するようなつもりになり、学生を想像しながら、こころを込めてビデオカメラに語りかけねばならない。

そしてそれはそれで楽しいものである。

リアル授業であれば自分が話している時に下を向いていたり、つまらなそうな顔をしていたりする学生が一人でもいると気になってしかたないが、そういう心配もない。

発音練習や音読練習のためのポーズを設けながらカメラに向かって一人で話すのは、あるいみで授業の一番大切な部分だけを抽出してプレゼンするような体験であり、改めて自分が学生に何がしてやれるかを突き詰めて考えてみる、よい機会となっている。


昔、高校教員だったとき、よく風邪を引いて声がほとんどでなくなったことがあった。そいう状況の時は、まったく声を出さずに授業するテクニックを工夫したものであった。声に頼らずに学生の音読に身振り手振りでフィードバックするのは、やってみるとそれなりにできるものである。そういう極端な体験は、声が戻ってからももちろん役に立つ。

今回のこの強制遠隔授業クライシスを乗り切った暁には、授業方法のレパートリーが以前とは比べ物にならないくらい豊かになっている気がする。

4/08/2020

zoom で教職セミナー始めました。

さきほど第1回の教職セミナーを遠隔でやってみました。まずまず手応えをつかんだので備忘を兼ねて書いておきます。

教材:教員採用試験に出題された言語習得・英語教育などをテーマにする長文

(1)オンデマンド:事前に私が CamtasiaでPC画面に写った題材を解説している60〜70分の動画を作成し、共有URLを配信して視聴させておく。


(2)すでに解説ビデオを視聴したことを前提に、Zoomミーティングを開く。きょうの参加者は私を除いて17名。やった活動は以下のものです:

- ひとりを指名して指定した1〜2文を音読させ、指導する。(他の全員は mute)

- ひとりを指名して指定した1〜2文を 平たいEnglishに変えさせる。(他の全員はmute)

- ひとりを指名して、チャンクに切りながら、私のあとについて音読させる。(他の全員はmute)

- 私がチャンクに区切ってポーズをおいて音読し、全員にリピートさせる。(全員をmute)

<感想>

一方通行で知識を与えるのは動画でオンデマンドで視聴させ、Zoomでは双方向のみのスキルトレーニングをする、というバランスが良いように思いました。60分程度で終える予定が、結局90分かけてしまいました。

指名した学生のマイクのミュートを解除するのに、一呼吸かかるのでリアル対面と同じ程度のテキパキ感は出せませんが、発音指導も十分に可能だということが確認できました。

画面共有してその画面にイントネーションコンターなどを描きながらプロソディ指導もできます。

一斉リピートも全員ミュートしているので、学生の口パクしか見えませんが、それはそれで本人たちはリアル教室と違って他の人に気兼ねせず、個人練習ができているのではないかな、と感じました。

これから7月までこれでやる予定ですが、これはこれでアリかな、と思えます。

4/01/2020

シンプルな遠隔授業である「メール・グルグル」のレポートをアップしました。

今年はどうやら遠隔授業がキーになりそうです。しばらく前の実践ですが、シンプルにメールだけを使った立派な遠隔授業である「メールグルグル」の論文を Academia Eduにアップロードしたのでよろしければ御覧ください↓

Guru-Guru” One-on-One Pronunciation Training via E-mail:
Strengths and Weaknesses Relative to its Standard Face-to-Face Counterpart

靜 哲人(SHIZUKA Tetsuhito

Abstract
The guru-guru method refers to a technique of one-on-one pronunciation practice/evaluation intended for a class of 10 to 30 students. The students stand forming a circle and the instructor walks around (hence its name, which means “round and round”), checking and correcting their pronunciation. The students try saying one of the designated sentences or items when the teacher comes around. When a student gets one item correct, she can proceed to the next one in her next turn; when she gets a fail, she has to keep attempting the same item in her subsequent turns. This activity ends when the time limit (typically 20-30 minutes) expires or at least one student passes the last item. This arrangement necessitates one guru-guru session’s ending without most of the students reaching the last item. To compensate for this limitation, an e-mail-mediated version of guru-guru, in which audio-recordings are evaluated outside of class, was attempted. Forty English-major undergraduate students were instructed to record their reading of a 42-word sentence and e-mail the audio file as an attachment to the instructor, who would immediately text back his feedback. The students were instructed to keep submitting new recordings until they got a pass mark. During a six-day period, the 40 students submitted a total of 321 files. Within the deadline, 29 students (72.5%) received a pass mark. The post-assignment survey revealed both strengths and weaknesses of this e-mail-mediated guru-guru activity relative to its standard in-class counterpart.


5 考察とまとめ

 質問紙に対する回答から、対面グルグルと比べた場合のMGの強みと弱点が明らかになった。文字ベースの返信という限界はあるものの、普段は授業中に対面でグルグルしている教師/学生の間であるならば、音声もフィードバックも後に残ることの利点は大きい。「フィードバックの意味がわかりづらい」という声も多いが、たとえば「R」とだけ書いてどの単語のRが問題なのかを書かなかったのは、教育的な意図に基づいていたこともある。また本論文では実証データを示す紙幅がないが、肝心の音声の質も確かに向上したことは指摘しておきたい。教室での指導と相補的に用いられるMGは、学生の発音スキル改善に大きな効果が期待できることが今回の調査でも明らかになった。「文字だけのダメ出しが心に刺さりすぎることがある」という声があったことに留意しながら、今後も指導の中でMGを適切に活用してゆくつもりである。