授業は指導案の、「主体的にとりくむ態度の評価の工夫」という文言からして「おそらく」とは予想していたのですが、やはり....。対話教材の不十分な一斉指導のあと、生徒に丸投げで「練習」させたあと、必然的にザ・デフォルト日本語ネイティブ英語音声で「発表」させて、それを的外れに「褒める」という典型的な手順。英語人生の事実上の出発である、大切に大切にすべき中1でこれか、と暗い気持ちになりました。
講評で最初にお伝えしたのは以下の内容です。
「ここは英語を教えるプロだけが集まっている閉じた場なので申し上げますが、授業者の先生は今日の教材に関してご自分の音声レベルをもっと上げていただきたいと思います。そうすると見えるものが違ってきます。汚部屋にいると他人の汚部屋は気になりませんが、自分の部屋を綺麗にすると他人の汚部屋が気になり出します。その状態になったら生徒の音声レベルをどうやって自分のところまで引き上げるかを考えて下さい。生徒は楽しそうでしたが、あれで満足させては彼らが可哀想ですよ。もっとずっと上手くしてあげられます。」
大きなメッセージは以上ですが、あと申し上げたのは以下の3点です。
(1)単語の綴りを(日本語ネイティブ英語発音で)スペルアウトさせていましたが、あれは、英語の文字を一文字一文字読ませて音声化する指導が欠如していることの裏返しです。Novemberのつづりを機械的に「エヌ〜、オオ、ブイ、イイ、エム〜、ビイ、イイ、アール」などと(しかも非英語発音で)言わせるのではなく、一文字一文字との対応を意識させながら、「ノウ...ヴェンm ブァ〜」ときちんと言いながら書かせる指導をしてください。
(2)教師の肉声での音読と、CD音声を聞かせるのと、棲み分けを意識してください。CD音声を聞かせてもそれだけで英語の音声が聞こえて真似ができる子は5%くらいです。あとの生徒はいくら英語音を聞いてもカタカナに翻訳して聞いてしまいます。だからそこで、教師の肉声でのコメントが必要になります。また特定の母音や子音を強調したり、リンキングを説明したり、ゆっくり発音したりして、徐々にCD音声のレベルまでもっていってあげるのが教師の肉声の役目です。
(3)Megのことを Megu と言っている生徒がいましたが、MegとMegu は音声数も違ってかなり違います。そういう母音を付加する、しない、というのは英語音声にとってとっても大きな問題です。たかが Meg vs. Megu ですが、すべてに通じます。MegをMegu と言う子は、nurseのことも、narsoo と言うでしょう。
この後講演に移り、最後は以下のスライドで結論づけました。
Let us teach English rather than Engrish.
【心】日本語ネイティブのための英語発音指導の重要性をきちんと認識し、それを生徒に本気で伝えましょう。
【心】生徒全員の発音が底上げされるように、授業ではいつも「まずはクリアな発音ありき」ですべての活動を組み立てましょう。
【技】グルグルをして、発音技能をコンスタントにシステマティックに訓練し、かつ評価しましょう。
【技】是非、授業のルーティーンに歌を取り入れましょう。