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11/25/2021

機械的 にスペルアウトさせることから透けて見える、実はとても深刻な問題

 生徒に単語のスペリングを言わせる(スペルアウトさせる)光景をよく見かける。あまりよく考えずに実践されていることが多いと思われるので、考えるべきことを整理してみたい。

(1)単語を正しくつづれる能力と、口頭でスペルアウトする能力は、関連しているがイコールではない。おそらく後者があれば前者はできるが、逆は必ずしも真ではない。自分でよくよくスペリングも発音も熟知している単語でも、スペルアウトはスムーズにできないことがあるのは自らを実験台にして確かめられる。果たして、初学者である生徒に、スペルアウトの能力は必要だろうか。私は必要ないと考える。

(2)スペルアウトするには、それぞれの文字の名前を正しく発音し、かつ3文字ないし4文字ごとにチャンクとして固めて、リンキングさせ、リズミカルに言うことが望ましい。果たしてそれができているか?単に、どカタカナ発音で、ティー、エイチ、ユー、アール、ディー、エイ、ワイ、と言わせることにどれだけ価値があるだろうか。私にはほとんど価値がないと思われる。ティーエイチューアー、ディーエイワーイ、と言うなら少しは文字の発音練習にはなるだろうが。

(3)スペルアウトさせようと言う発想は、フォニックス的な感覚を指導していないことの裏返しであることが多くないだろうか。つまり、Thursday という語を提示するときに、TH[θ] + UR[ə́ːr] + S[z] + D[d] + AY[eɪ] でそれぞれの音があるので、足し算して θə́ːrzdeɪ なのだ、という指導をせず、機械的かつ丸暗記的にスペリングを何度も言わせて覚えさせる、という発想になっていないだろうか。フラッシュカードで単語全体を提示して、全体でこういう音だ、スペリングは何度も目でみて覚えろ、スペリングを言って覚えろ、という指導と言えない指導になっていないだろうか。

(4)どカタカナ発音でスペリングを言わせるのは、英語の音自体をきちんと指導していない、英語の文字と音の関係をきちんと指導していないことの裏返しではないだろうか。library  に対して、エル、アイ、ビー、アール、エエ、アール、ワイ、と言わせる必要はまったくない。なぜなら文字をそのまま読めば発音になるし、発音をそのまま文字で表せばこのスペリングになるからだ。発音をきちんと指導しないから、生徒とすると「クソ暗記」をせざるを得なくなり、「えっと、LかRだっだけど、どっちが先だったけ?」ということになるのだ。

日本の街中の様々な掲示物に見られる英語スペリングは、日本の中学高校(+大学)の英語教育の成果の端的な現れだと思うが、L/Rの混同が半端ないのは、多くの学校で発音指導せずに機械的なスペルアウトをしていることの必然的な帰結だと言えるだろう。


以下はFacebook Groupの、Engrish in Japanに投稿された写真のほんの一部である。