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10/20/2011

不要な明かりは消しましょう、プリーズ!

昨日は中学生のスピーチコンテストの審査員をしてきました。全体に、きちんと発音しようとする生徒が増えたように感じました。

優勝者はなかでもとくに1語1語を丁寧に発音する子で、「英語」学習者として出場している「英語」弁論大会でのパフォーマンスとして非常に好ましいと感じましたし、内容も中学生らしい、個人的体験に基づきながら一般聴衆にもrelevanceの感じられるものでした。大げさすぎるジェスチャーがなかったのも好印象だったと個人的には思います。

↓に記事があります。


http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news2/07/20111020-OYT1T00107.htm?f=k

講評は私が英語自体と発音面、もうひとりのネイティブの先生がそれ以外の内容やジェスチャーについて、とあらかじめ分担を決めて行いました。

私は、2年前はLとRの区別の大切さ、昨年はリズムの大切さ、を話したことを振り返ってから、今年は、focus word
に光をあてることの大切さを話しました。これは、なかなか教員でも出来ているひとが少ない、とかねて感じているものです。

明かりを消す、ということ

I was surprised that Yoko speaks such good English.

が全体に初出の情報を伝えるのに対し、

I(強い)  was surprised that Yoko speaks such good English. (= though YOU weren't.)

I WAS surprised that Yoko speaks such good English. (= though I did
not LOOK like so)

I was surprised that YOKO speaks such good English. (= I know KEIKO is
a good speaker, but did not know about Yoko)

I was surprised that Yoko SPEAKS such good English. (because she
WRITES terrible English)

I was surprised that Yoko speaks such good ENGLISH. (because her
JAPANESE is terrible!)

などは、それぞれ例示したようなニュアンスを伝えるのですが、そのためには、大文字の単語を強く言うというよりも、そうでない単語のピッチを1段落として、話すことが必要です。

いわば、大きなホールの他のライトをすべて消して、焦点を当てたい単語にだけライトを当てるとスポットライトになるが、いくらスポットライトを当てているつもりでも、他のライトを全部つけていると、スポットライトがスポットライトにならない、のと同じです。

これは前から友人の手島良さんなども著書に書いていますが、日本人学習者は、強い部分を強く言うのが足らないのではなく、弱い部分を弱く言う練習が足らない、のです。

昨日の出場者の中にも、やたらに全部の単語を大きな声で元気よく言うだけなため、焦点でない単語に焦点が当たっているように一瞬誤解させられて、わかりにくかった生徒が何人もいました。とくに、意味もないのに "I" を強く言い過ぎる生徒が多かったようです。

ので、これからは不要な明かりを消すことを覚えましょう、としめくくりました。

これはポーズとも関係があり、焦点を当てる単語の前、(そして時には後)には一瞬のポーズ(ためる)をおき、それ以外にはチャンクの切れ目以外に不要なポーズをおかずにいっきに言うことがとても大切です。そうでないと何が(どの部分が)言いたいことなのかが分からないからです。

なお、ポーズを置かないことと、冒頭の、1語1語はっきり発音する、のとはまったく矛盾しません。1音1音きちんと発音しつつ、流れるようにリンクして発音するのが大切です。

こういう視点も日頃の指導に生かしてみてください。


司会者の英語


しかし、式の主催者側の英語教員の発音にはオイオイ発音がまだまだ多く、せっかくの英語弁論大会なのに生徒のスピーチに集中できず気が散りました。

Mr = Mister を Mistar  と発音する、という母音の問題とか、LがLになっていない、という場合が多かったです。 2000のTHをSで言う先生もいましたね。


発音以外でも英語の(限りなく)間違い(に近い不自然な英語)が多かったですね。


誰かを紹介するときに、

Next, Mr. XXXXXX, who is the president of YYYYYY, is going to ..

という英語はありません。

who is the は削除します。

Next, Mr. XXXXXX, president of YYYYYY, is going to ..

です。


それから、スピーカーを呼ぶ時に、

Mr. ZZZZZ, please!

と連呼していましたが、あれは、「~さん、どうぞ!」という日本語の直訳でしょうが、そんな英語はありません。

AAAAA, please.

というのは、

A knife, please.

= Can I have a knife, please?

みたいな場合に使うか、

Aさんに何かをしてもらいたいのに、それを何らかの理由でAさんが拒否している、場合、あるいは逆にしてはいけないことを、Aさんがやろうとしている場合、に、

Mr. AAAA. Please! (お願いしますよ!やってくださいよ! あるいは、やめてください!)

といって、その行為を促す、あるいは止める、ような時に使います。

式で、次の出場者に登壇を促すなら、

The next speaker is from XXXX JHS. The title of the speech is YYYYYY.
(ちょっとためて出場者を見て) Mr. ZZZZZZ!

というか、より機械的に

The next speaker is Mr/Ms XXXX from YYYY JHS. She/He is going to talk under the title (ためて) YYYYYYY!

といって、YYYYY を合図にスピーカーが黙って登壇する、のがよいと思います。

コンテストのように、何人もの出場者を次々に呼び出すのではなく、講演者をひとりだけ紹介して登壇を促すような場合なら、

ひとりしきり講演者の紹介をしてから、

......... Now, ladies and gentlemen! Please welcome
(ちょっとためて、本人の方を向いて) Prof. XXXXXXX!

などと言います。

いずれにしても、文構造を工夫してできれば、名前(あるいはタイトル)を文末に持っていき、その前にポーズをおいて、本人にすれば明らかに呼ばれているような感覚をが持てるイントネーションとストレスを使うのが大切です。


日本語のスピーチでも、最後のほうで、「本日は本当に」というフレーズを声を張り上げて言うと、聞き手は「ああ、終わりだな」と感じて拍手の準備をする、のと似ています、かね?