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10/30/2011

韓国大学入試スピーキングテストの衝撃

昨日、日本言語テスト学会があったのですが、そこで、韓国言語テスト学会のトップのお二人から、韓国の新スピーキングテストについての発表を聞きました。

断片的には聞いていたのですが、今回直接、全体像を聞いて、かなりショックを受けました。

まずバックグラウンドですが、すでに現在韓国では英語に関して大学は個別試験をしていません。センター試験にあたるリーディングとリスニングのみで決めています。このテストの中身は私の考えでは、非常に望ましい形で、文法などを直接問うものはなく、ある程度の長さの英文を読んであるいは聞いて1問だけ内容把握問題に答える、というのが50(だったか40だったか)問、です。もちろん英文韓訳などはなく、すべてマークシート。

この試験だけでも我が国の状況から見るとずいぶん進んでいる、と思うのでうが、スピーキングとライティングがない、ということで以前から批判があり、(当然ですが)その試験の開発を進めてきました。

で、来年から大学入試として一斉スピーキングとライティングのテストも始める、というのです。

スピーキングテストは、例えば、



There are many types of books around you.  If there is one book that you like, tell us about it and why you like it. とか、


What do you want to be in the future?  Tell us what you want to become.

とか、パッセージを読ませてそれについて意見を言え、とか、6コママンガを見せて描写しろ、とか、グラフを見せて口頭で描写しろ、とかの問題を、一人につき4題だされ、それにたいして1題につき15秒以内に話す、というようなものです。

で、当然、internet-basedでコンピュータ相手に話し、録音したファイルがクラウドで保存され、それを訓練を受けた採点者(これは高校の先生たち)が採点し、ABCFの4段階で評価する、ということです。

で、受験者は毎年 60万人なのですが、現在では、同時に受験できるのは5万人「だけ」(!!)なので、問題が異なるが難易度が等しい(はずの)テストを年間で12回実施する、ということです。(5万人が同時にスピーキングテストを受験できるインフラがある!

問題例はいずれも非常に好ましいもので、このようなタスクに対応しようと思って練習すれば、かならずスピーキングの力はつくだろうと思えるものばかりでした

しかし。。。。、数年前にやっとセンターにリスニングを導入しても、毎年機器のトラブルがどうしたこうした、と鬼の首でもとったように大騒ぎし、やっと今年小学校に英語を形だけ導入しても「教える必要はない、覚えさせる必要はない、楽しませればいい」とかいうレベルの話に終始している日本と、この圧倒的な差は何なのでしょうね。

同じ極東のEFLの国で、しかも向こうは人口が半分以下でしょ。植民地だった東南アジア諸国とレベルが違うのはしかたないとしても、韓国とこれだけ差がつくのでは言い訳できないね。英語との距離も日本語と韓国語はほぼ互角だし。

この学会で、私自身は、以前の務め先の経験についてシンポジウムで報告したのですが、それを聞いて韓国英語テスト学会の会長は、

「すると日本ではまだ個別の大学が試験を出して、しかも英文を母語に訳させるようなことをしているのか?!」

と驚いたようで、懇親会では

You are living in the 19th century!

と笑われ、(ちなみに、韓国語に訳させるのは、1980年代にやめたそうです)

おまけに、

Korean English education is much more advanced than Japanese English education in every aspect, in EVERY aspect!

と言われてしまいました。

残念ですけれど、まったくその通り、としか言えません。

  • 教員の英語運用力
  • 教科書のレベル(というか英文の量)
  • 大学入試英語テストの種類と質
  • TOEICのスコア(前にもいいましたが、サムスン電子の入社試験は足切りが900点です)
  • 大学でも、いろいろな分野で、英語で講義されているものがかなり広がっている (英語で講義できない大学教員は職を脅かされているらしい)
のいずれをとっても、大きく水を空けられていると思います。

そして、これで来年から nation-wide internet-based English speaking testが始まれば、そのbackwashは必ずあり、彼らの平均的なスピーキング力はどんどん上がっていくのは間違いないでしょう。

近い将来に日本が同じことができる、とは想像できませんね。いろいろな意味で。

追いつこうとしても、向こうも、 We are not sleeping! ということなので、さらに進化するでしょうし。

少なくとも私が現役でいる2025年までには、もう追いつけないような気がしてきました。

別に韓国との優劣自体は二の次と思いますが、貿易立国しかない日本で、これ以上のガラパゴス化で、国力がますます衰退することになり、我々の生活はまずます苦しくなり、世界の二流国に転落してゆく、のではないでしょうか。奇しくも帰りの新幹線で手に取ったWedgeには、日本の物流が急速に釜山港に取られている、というレポートが載っていました。

英語教育政策を根本的に考えなおさないと手遅れになるのではないでしょうかね。