街で、「ベリーベリースープ」という看板の店を見た。カタカナとともに、
Very Berry Soup
の英文字も。
http://www.soup-innovation.co.jp/
ブルーベリーとかラスベリーとかの店かなぁ。。。といぶかりながら近づいてメニューを見てみると、とくに berry 類を使ったスープというわけではなさそうである。(それはそうでしょうね。ベリーは酸っぱいし。)
非常に違和感を感じたので、HPの「お問い合わせ」に次の質問を送った。
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■名称につきまして
街頭で貴社の「ベリーベリースープ」の看板を見まして、大きな違和感を感じました。
「ベリーベリースープ」は、Very Berry Soup と綴っていますが、Very と Soup はいいとして、
(1)Berry には何らかの意味があるのでしょうか。berry はストロベリーやブルーベリー類を指しますが、それらの果物がスープに使用されているのでしょうか。
(2)また、very ( ) soup とした場合、veryは副詞なので( ) には形容詞が入りますが、berryは名詞です。very名詞 という通常は非文法的な組み合わせを、敢えて選択したことに何らかの意図はありますか。「ベリー類の味がするような」という形容詞として使っているのでしょうか。
(3)考えたくはありませんが、万一、単なる「ベリーベリー」という音が先行し、それに適当な英単語を当てはめただけ、ということであるならば、国をあげて2020年の東京オリンピックに向けて英語教育を強化してゆこうとしている現在、かなり時代錯誤的なネーミングではないのでしょうか。海外からの観光客がどう感じるを案じますが、この点、いかがでしょうか。
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すると数日後、回答が来た。公開してよい、という担当者の方の同意を得て、以下にペーストする(赤字強調は私です):
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下記3点のお問い合わせをいただき、誠にありがとうございます。
まず、当社が展開しておりますブランド名「very berry soup」は、英文法に従った意味のある言葉ではなく「記号」でございます。したがいまして英文法として成り立つものではなく、広く一般に海外の方々にもわかりやすい店舗名であると一定の評価を得た上で既に多くの方々に認識されておりますことをご理解いただければと存じます。
また、berryを用いた背景として以下の想いも込めて引用しております。
l 「very berry = みずみずしく色鮮やかな果実(berry)が沢山集まった可愛らしいイメージです。また、そのイメージは、ベリーベリースープのお客様及び関わるすべてのスタッフ・お取引先様が、いきいきと生活していく姿を願っています。商品は基本的に「赤/緑/黄」を配色し、鮮やかに美しく盛り付け提供します。
l 女性に馴染みやすい響き、女性をイメージさせるキーワードであり、食欲と可愛いらしさもイメージしています。
l ブランドロゴマークは、スープから出る湯気をイメージ、ロゴの中にブランド名の頭文字の「V・B・S」が隠れています。
以上、言葉の意味をブランドコンセプトと一致させる手法が一般的な中、当社ではあくまでも「字体インパクト・印象・音・響き」など感覚の部分に訴える意図を強くもっております。
様々な御見解があるかと存じますが、今回のご意見を切っ掛けに、上記の様な意味も広く普及していけるよう、ブランドのブラッシュアップに努めて参ります。この度はご意見ありがとうございました。
引き続きどうぞ、ベリーベリースープをよろしくお願いいたします。
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「意味のある言葉ではないが、広く海外のお客様にもわかりやすい」とは論理が不明であると思われた。そこで、この回答に対して、これを御社の公式見解として公開してよろしいでしょうか、という質問とともに、さらに以下の補足を送った:
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私の立場を補足しておきますと、私は英語を教えることを生業としている者であり、せっかく中学校・高校・大学で学んでいる、英語を、まさに御社のご回答にあるような:
「英文法に従った意味のある言葉ではなく「記号」」
として扱いがちである、日本社会の風潮を憂いている者です。
very berry soup というネーミングは、「広く一般に海外の方々にもわかりやすい」とおっしゃいますが、それどころか、「今どきになっても訳の分からない英語がTシャツや街の看板に氾濫している英語後進国、日本」というネガティブなイメージを助長する、と理解しています。
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すると、次の最終回答が来た:
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弊社のブランド名についてですが、昨日回答させて頂きました内容が全てでございます。
看板を掲げている以上、様々なご意見があると思いますが、今後も「とても美味しいスープ屋さん」の代名詞になれるよう全国展開を加速していければと思います。
ブログのお問合せについても、送らせて頂きました内容を当社の見解として頂いて構いませんので、それを見た方々のご来店・ご飲食が増える事を願って、心待ちにしております。
今後とも「ベリーベリースープ(Very Berry Soup)」を宜しくお願い致します。
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念のために言っておくと、印象として、ご担当者からの回答もきちんとしており、きっと「まっとうな」会社の、美味しいスープ屋さんなのだろうと思う。
しかし、そういう日本のごくごく「まっとうな」」会社のまっとうな人たちが、
(これは英単語を使っているけれども、文法などはどうでもよく)「意味のある言葉ではなく、記号です」
というレベルの意識で英単語を濫用して自社ブランドという大変に重要なものを決めてしまうのがまだまだフツーだ、という状況自体が、(英語学習・英語教育に関しては)大変に暗い日本の現状を象徴していると私は考える。
あるいみ、collectiveな意味での「われわれ」英語教師のやっている日本の英語教育の成果のレベルがその程度だ、ということであり、大いに失望し、反省しなければならないのではないだろうか。