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8/19/2019

グルグルは「悪即斬」などではない

先般のシンポジウムで、私に対して「靜先生のような『悪即斬』. . .」に類した表現を使った質問があった。私は「悪即斬」という熟語は初耳だったでの少し戸惑ったのだが、「悪は即、斬る」という説明をうけてとりあえず納得して、その場で聞かれたことに答えたはずである。

が、今になってみると、グルグルにせよコーラス音読にせよ、生徒の発音不備に気づいたらすぐに指摘しなければ効果がない、という私の提言を、「悪即斬」という(あとから検索してみると映画の主人公のセリフだというが)表現でとらえるのは、なにか違うと思うので、書いておく。

道徳的な「悪」人は直ちに「斬って」殺すべきだ、というニュアンスと、誤った/不十分な/不明瞭な発音・文法表現・語彙は、直ちに指摘し、向上のためのアドバイスをすべきだ、というニュアンスはまったく違う。

それではダメだというフィードバックを negative feedback、その調子でやれよというフィードバックを positive feedbackということがあるが、positive と negativeという反対語を用いるのはミスリーディングだと思う。どちらのフィードバックも、学習者のパフォーマンスをもっていきたい方向、近づけたい方向は一緒であり、同じベクトルを向いているからだ。

私は目の前の学習者のパフォーマンスを良くするために、悪い点を指摘し、こうあるべきだというモデルを示す。そのフィードバックで改善した学習者は、よりよい英語ユーザーになってゆく。悪即斬で、悪人を斬り殺せば、その悪人は死に、世の中からいなくなる。そのふたつは全然ちがう。

そういう捉え方をしていること自体がダメなような気がしてきた。