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12/04/2010

評価における同僚問題を解決する方法

他のクラスと不公平にならず、自分独自の評価を成績に反映させる方法

靜 哲人 2010/12/04

問題の所在

多くの学校で、成績は学年共通の定期テストの素点によるという縛りがある。このため、自分の授業の平常点や音読テストなどの自分の独自の視点による実技点を成績に反映させたいと思ってもできない、というジレンマを抱えている教師は多い。そこで、「成績は定期テストの素点による」と「自分独自のデータを反映させる」という二律背反を解決する方法を紹介する。

概要

1 学年で決まっている定期テストの素点により、クラス平均を出す。たとえば、

A組 73.2
B  68.1
C  66.3
D  70.6
E  71.9

となったとする。このうち、E組をあなたが担当しているとする。E組のクラス平均は71.9点なので、E組の成績の平均は71.9点である。

ここからがポイントである。他のクラスの先生は、あなたがE組にどういう方法で成績をつけようと、本当のところ、定期テストで決定された相対的なクラス関係が変わらない限り、文句はないはずである。つまり、あなたがE組に対して平均が71.9である成績をつけている限りは、その中身に多少平常点を加味しようがすまいが、基本的には自分には関わらないので、文句はないはずである。

(それも許されない、となると話は終わるが、交渉してみればそれなら構わないというケースは少なくないと思われる。)

以下は、それは交渉によって了解をとりつける、という前提で論を進める。であれば、つぎに担当のE組のクラスの生徒に対して、「自分は授業の内容を反映して平常点など独自のデータを加味した成績をつける」と宣言し、説明のうえ納得させる。

結局どういうことかと言うと、

(1)  クラスの平均点は学年共通の定期テストの点数をそのまま維持して評価がつく。
(2)  クラス内の個人個人の点数は、定期テストに加えて授業内容を反映したデータによって評価が変わる。

というふたつの条件を満たすように評価する、ということである。すると言い方を変えると、クラスの平均点は定期テストのみでつけた場合と変わらないが、クラス内の順位は独自の視点によって変動する、ということである。

方法

具体的にやり方をしめす。次のようなデータがあるとする。定期テストの平均は71.9。このほかにあなたは小テスト10回および音読テスト3回それぞれの合計点を使って成績をつけたいと思っている。

定期テストだけでつけると明石家さんまがクラストップだが、音読テストなどもふくめてみると黒木メイサがトップである。なんとか授業中に頑張っている黒木メイサによい評価をつけたいのだ。





単純に、定期テスト+小テスト+音読テスト を出すと、クラス平均が178.8になってしまうので、このままで成績をつけることはできない。要はこれを「圧縮」して、平均71.9に変換してやればよいのである。

(1)ケース1

最も単純な方法は、全員の点数に等しく、

71.9/178.8 = 0.4021

をかけることである。実際にやってみると




となり、小数点以下を四捨五入すると、


 となる。黒木メイサが97点でトップとなり、明石家さんまは69点に抑えられた。

(2)ケース2

この成績に満足ならそれでよいが、場合によっては最高点が高すぎる(100点をオーバーすることも理論的にはある)とか、最低点が低すぎる(教育的な理由から、最低点は一定の点に押さえておきたい、など)などと感じられる場合がある。そこで、こんどは、

A 平均点は 71.9 であり、
最高点は、90点である

という条件を満たすような変換をしてみる。(平均点と最高点と最低点のすべてを満たすことはできないのはわかるね?)

こんどは、

x 178.8(クラスの平均点) なら、y が 71.9 になり、
x 242 (黒木メイサの点数)なら、y 90 になるような、

y = ax + b

と の値を発見すればよいのである。

こういう変換を一次変換と言い、a を 「傾き」、b を「切片」という。英語ではそれぞれ、

slope  と  intercept

と言う。なぜこんな用語を出したかと言うと、エクセルで必要になるからだ。次のように入力する。






178.8 と 242 が x の値(もとの値)であり、 71.9 と 90 がyの値(変換後の値)である。まず、slopeを求めるには、



傾きを求めたいセルに =SLOPE( 

と打つと、既知のyは何かと聞いてくるから 71.990を選択して、





カンマを打つと、こんどは、既知のxは何かと聞いてくるから、178.824.2を選択してやり、




enterキーを打つと、





傾き、つまりaの値が求まった。約 0.286 である。次に、同様に切片を求める。

切片を求めたいセルに、=INTERCEPT( 
と入力すると、既知のy、既知の xを聞いてくるので、順番に指定してやる。



enterで決定すると、切片つまりbの値が求まる。




結局、a = 0.286  b = 20.69 である。つまり求める一次変換の式は、

y = 0.286 x + 20.69

である。この式を全員の点数に適用すれば、平均が71.9 で、最高が90 になる。実際にやってみよう。







確かに黒木メイサの得点は90 点になった。平均も71.9であることは確認すればわかる。

以上は、平均点と最高点を指定して y = ax + b を求めたが、同じ要領で、平均点と最低点を指定して、そのような条件を満たす y = ax + b を求めることもできる。また、今回の「平均を固定しておく」という趣旨とはずれるが、最高点と最低点を指定してそれを満たすようなy = ax + b を求めることもできる。
 たとえば、なるべくクラスの中でばらつきを出したい(悪い者は悪い点に、良い者は良い点に)とか、逆に、差をぎゅっと圧縮したい(良い者と悪い者の差を、全員に公平になるようにしながら縮めたい)とかの場合である。

ケース3 最高点と最低点を指定する

最高の黒木メイサを99点、最低のビートたけしを10点にすることとしよう。今度は、平均点ではなく、最高と最低を使うので、それぞれ =MAX(    =MIN(    を使って(使わずに目で見て最高と最低を探し、手で入力してもいいが)を入力し、それぞれのよこに、変換後の最高点99、変換後の最低点 10 を打っておく。





先ほどと同じように、変換前のx 242 144  変換後のyが9910 なので、SLOPE と INTERCEPT を求める。




求まった。この y = 0.908 x + (-120.78) を全員に適用すると、




たしかに、99点から10点までにばらついた。
 しかしよく考えてみると、9910はやっぱり良くないな、と思ったとする。9060にしておこう、とあなたは思い直した。その場合は、変換後の最高点と最低点として入力しておいた 9910を、それぞれ、9060 に打ち直すだけで、すべてのセルの再計算を自動でしてくれる。




このように微調整しながら、自分の教師としての感覚に最もあう数値を採用すればいいのである。

なお、最高点、最低点、平均点の3つを指定しておいて、同じような 
= SLOPE(     =INTERCPET (    を求めるとどうなるかというと、指定した3つの値をおよそ満たすような y = ax + b  の a b を教えてくれる。

以上の方法を用いて、是非、自分の視点を反映させながら、他クラスとの不公平感が生じないような妥当性のある評価をしてもらいたい。

以上