発音指導の話をすると、かならず出てくるのが、「発音指導をしてしまうと、こどもの動機づけをそいでしまって英語嫌いにしてしまうのじゃないでしょうか」という問。
そんなことはないですが、百歩譲ってそういうこともあるとして、では、そういう問をするあなたに逆に聞きたいことはこれです。
「まあ、だからその理由であなたは今は発音指導をしないのですね。それでは尋ねますが、いま発音指導をしないにしても、その学習者が、いつかは英語らしいクリアな発音で英語を話す日を迎えさせてやりたい、という気持ちはありますか?ありませんか?もしあるのなら、いつどうやって、どういう段階を踏んでその日を迎えさせてやるロードマップを描いているのか教えてください。」
「私は目の前の学習者に「いつか」英語らしい英語を話させてあげるための、私の知っている唯一の方法は、いま、私が、この手で、この場で、発音を直してやることだと考えて(本当は、「知って」)いるので発音指導をしています。その方法を先送りするあなたは、では、いつ、どのタイミングで、どうやって、その学習者の発音の改善を実現する見通しがあるのですか?」
「たんに今自分が『いい顔』をしていたいから、責任を先送りしているだけではなくて、きちんとした見通しがあるのですか? どういう見通しですか?」
「知っていると思いますが、単に使っているうちに発音がよくなることは100%ありません。英語圏で何十年も暮らしていても、発音レベルがそのままである移民はゴマンといることは周知の事実です。」
「見通しがあるなら教えてください。」
「もし、見通しもなく、そもそも、そういう日を迎えさせてやりたいという基本的な気持ちがないのであれば、あなたとの話はこれで終わりです。そういうあなたという教師を私は心から軽蔑し、あなたに教わっている不幸な学習者を、こころから不憫に思います。」