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4/04/2018

学生向け<名前の認識におけるトップダウン処理の影響>

「しずか」という姓は珍しいので、昔から苦労してきた。

電話で姓を名乗って、一発で聞き取ってもらえることはほぼ皆無である。どんなに滑舌良く、明瞭に「しずかです」と発音しても、十中八九、「いしずかさんですか?」と来る。

では、とばかり、「し」に力をこめて強調して「ずかです」と言うと、「しいずかさんですか?」と。どうすりゃいいんだよ?

これはもちろん聞き手のスキーマとして、日本人の姓として「しずか」というのが登録されていないために、ボトムアップ的にいくら「しずか」という音が聞こえてきても、「いやいや、そんな名字はないから、きっと石塚に違いない」というトップダウン処理が行われ、結果的に「石塚さん」という誤りに到達する、というトップダウン処理が結果的に悪影響を及ぼしている例といえる。

で、音だけではない。

大学の隣にうどん屋があり、待っている客がいる昼時には名前をウェイティングリストに書かされることが多い。今日は大学のそばのラーメン屋も大変混んでいたのでやはり同じように名前を書いた。で、うどん屋でもラーメン屋でもまったく同じ現象が起こった。

もし「靜」などと書けば、おそらく「しずさん」「せいさん」と言われるので、もちろん漢字など使わない。カタカナで書いてください、と書いてあったっけ?それは覚えていないが、うどん屋でもラーメン屋でも、同じように、カタカナで「シズカ」と書いた。読みやすいように、丁寧な楷書で、ちゃんと「シズカ」と書いた。

しかし私の番になって店員の人が言うには、うどん屋でもラーメン屋でも、まったく同じく、

「お一人でお待ちの、ツズカ様?」

ツズカじゃないよ。これ「シ」って字でしょ?いい歳して「ツ」と「シ」の違いもわからないの?とは言わないが、心で思いつつ、「あ、これですね。これ私です。」

気をつけていないと順番を飛ばされそうだ。

これもリスニング時と同じように、「シズカ」と書いてあるから、店員さんの視覚からは明瞭な「シ」という文字情報が入ってくるのだが、彼女の長期記憶の中のスキーマには「シズカ」なんて名字がないので、

「この名前は一見シズカに見える。いやいや、しかしシズカなんて名前はこの世にないはずだから、このシに見えるのは私の目の錯覚であって、ツに違いない。だから、このひとは「ツヅカさん(津塚?)だ」

という要らぬトップダウン処理が働いて、結果的にリーディングでもやっぱり私の名字は相手に伝わらないのである。

次回はひらがなで「しずか」と書いてみよう。もう読み間違えないよね?