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9/09/2021

「ダメ出し」をする絶滅危惧種教員のつぶやき

私は特に発音指導に力を注いでいる英語教員です。発音は舌、唇、あごといった調音器官の動かし方の巧みさによって決まります。脳がそれらの調音器官を上手く動かす力(細かい運動技能)に関わりますので、知識として知っているだけではだめで、実際に舌や唇がそのように動かせるかどうかが問題となります。この点で、腕、手、指などの動きによって決まる(と素人には思われる)書道実技とかなり共通する部分もあるのではないでしょうか。

書道でも同じだと思いますが英語発音においても誰もが最初から完璧に上手いということは当然ありません。というよりも上手くない段階だからこそ教室という場にいるわけです。そこで指導が大切になります。ところが現在の英語教育界では発音の指導には人気がありません。人気がないどころか時代錯誤的であると思われているフシさえあります。

ひとつの原因は、英語が世界中に広まって特に発音に関して様々な変種が生まれた結果、「発音なんかそれぞれでいいじゃないか」という考えが主流になったことです。書道に喩えるなら「文字の見かけなんかそれぞれでいいじゃないか」とでもなるでしょうか。

もうひとつは「学習者は褒めて育てるべきで、パワハラと言われかねないダメ出しなんてやめよう」という考えです。書道に喩えれば、「学生の書いた書はとにかく褒めるのが大切で、足りないところを指摘するなんてもってのほかだ」となるでしょう。

どちらの姿勢も私に言わせれば馬鹿げています。発音の様々な変種のなかにも「これだけは外してはならない」という最大公約数は厳然として存在しますし、指導にあたっては良いものは良い、ダメなものはダメだと明確に伝えて上達のヒントを示すことこそが教師の最大の責務と考えるからです。

ところがこういう姿勢をもった英語教員はどうやら「絶滅危惧種」のようです。それは残念なことですが、私個人には関係ありません。種として絶滅しようがしまいが、私自身は最後の最後まで「ダメ出し」を続け、自分の受け持つ学生たちの英語の質をできる限り上達させる責務を全うするつもりです。