Total Pageviews

2/24/2020

アメリカ発音を真似する必要はない

(学生向け)

学生によくある誤解を正したいので書いておきます。それは、私は発音や音声を重視する英語指導を提唱していますが、アメリカ人(だけにある)発音を真似することを目指しても求めてもいない、ということです。

目指し、求めているのは、英語という言語が英語であるための最低限の音声上のコアです。国際語としての英語(Englsih as an International Language; EIL)を目指し、求めていると言っても(私にとっては)同じことです。

だからアメリカ英語だけにあってイギリス英語にはない特徴や、オーストラリア英語にだけある特徴や、イギリス英語だけにある特徴などの習得を生徒に求めることはありません。

この観点ならみて、英語を教える時の最も頻繁にみられる誤解は以下のふたつです。

(1)Rはいつでもどこでも大事だ、と教える誤り

日本語ネイテイブが英語を学習するとき、日本語にはひとつしかない流音(=ラ行音)を、LとRに分化させることは何よりも大切です。しかしRというスペリングがあれば機械的に「Rだ!気をつけよう!」と生徒に呼びかけるのは誤りです。

後に母音が続くR (例 rain)はどの英語でも発音されますが、母音の後に続くR(are, fair, door, core, there, here)を発音するのはアメリカ英語だけで、イギリス英語やオーストリア英語では発音されません。よって国際英語の観点からは習得は必須ではないのです。

もちろん「アメリカ発音を真似したければこうだよ」と教えるのはいいのですが、それはあくまでアメリカ発音だけの特徴だということをわきまえておかなければなりません。いわんや、グルグルでの発音チェックのポイントにするなどは的外れだといえます。Rを言わないなら言わないでも立派な英語なのですから。

(1)Tはラ行で発音せねば本物の英語でない、と教える誤り

Let It Go は「レリゴー」と表記されました。Letの語末のTが、有声化してたたき音になり、日本語のラ行とほぼ同じ音になっている現象を、カタカナで表記したわけです。同じ現象が、partyが パーリ betterが  ベラ not at all が ナラロー と聞こえるときに起こります。

しかしこのT音の有声化はイギリス英語では起こりません。イギリス英語ではTは「きちんとした」無声音として発音されるので、Let It Goは、「レティ...」ですし、partyは「パーティ」(しかもR音はなし)、betterは「ベタ」です。つまり国際英語の観点からはこのTの有声化も習得必須項目ではありません。

これもアメリカ人っぽい発音になりたい生徒には教えてやればよいが、そうでもない生徒味は必要ない項目です。

そういう発音がなされるアメリア英語を聞く機会はおおいので、リスニングの観点から聞いてなれておくことは必要ですが、発音のフェイズにおいても「これが本物の英語だ」的な姿勢で生徒に習得を強制するのは根拠がありません。

まとめ

リスニングの指導のときに様々なタイプの発音に触れさせるのは大切です。しかしスピーキングに際しては、まずはすべての(ネイティブ)英語タイプに共通な音声項目に絞って習得させましょう。「アメリカ人っぽい発音をしたい」「イギリス人っぽくしゃべりたい」「オーストラリア人を真似したい」という個人的希望に応じるのは、あくまでその後、オプショナルなことがらです。母音後のR音、有声化するT音は、英語のコアに含まれていない、「お好みでどうぞ」のオプションです。