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9/11/2018

「先生」に必要な心・技・体を育てよう

靜 哲人

みなさんは、将来、教師になることを夢見ている、あるいは何らかの形で教職に関わることを考えていると思います。では「先生」にはどのような資質が求められるでしょうか。スポーツや武道の世界でよく「心・技・体」と言いますが、よい教師になるためにはどのような「心・技・体」が必要でしょう。

第一に必要なのは「体」です。教師の「体」とは、自分が教える専門領域における知識と技能のことです。英語力が低い先生から英語を教わりたい生徒はいません。スノボが下手な先生からスノボを教わりたい人はいません。自分の専門分野が何であれ、みなさんは教員免許を取得するまでに、生徒に「この先生はすごい!」「この先生みたいになりたい!」と思われるような、専門家としてふさわしい知識と技能を獲得してください。「教える」などと大それたことを考えるのはそれからです。一般論として今のあなたに最も大きな「伸びしろ」があるのは、この「体」の領域です。

次に必要になるのは「技」です。英語のネイティブ・スピーカーは英語の「体」に関しては完璧かもしれませんが、そのままの状態で教師になれるわけではありません。自分の「体」を子どもたちに伝えるための技、教える技術がなければ教師とは言えません。「名選手必ずしも名コーチならず。」スノボのインストラクターには、自分の身体感覚を、分析的な言葉で噛み砕いて伝える技術、段階を踏んで教える技術、大人数の生徒ひとりひとりに的確にフィードバックする技術、遅れがちの生徒を励ます技術など、数えきれない「技」が必要になります。教科教育法の授業を中心に「技」の引き出しを増やしていきましょう。

そしてそういう「体」と「技」が活きるのは、教師としての「心」があってこそです。子どもが好きだ、生徒たちと関わりたい、教えるのが好きだ、という心。目の前の生徒をもっと上達させたい、という心。もっと心の温かい、広い視野ををもった人間になってほしい、という心。自分と関わる生徒には幸せになって欲しい、という心。つきつめていうならば、自分の生徒を愛する「心」。極論するならば、これがなければ他の何があっても教師としてはダメですし、逆にこれさえあればあとはなんとかなる、とも言えます。教職課程を履修しているあなたには、すでにこの「心」に関しては自分なりの思いがあると信じます。これからの学習と体験を通じてさらに自分の「心」を見つめていってください。

最後に、「心・技・体」のどれが一番大切か、という問いには意味がないと考えます。「心」がなければいくら「体」と「技」があっても子どもが不幸です。「技」のない人はいくら「心」と「体」があっても空回りします。「体」が足らなければ、「心」はお題目になり、「技」も使えません。つまり「心・技・体」はどれひとつが欠けても、よい先生にはなれません。みなさんは、教師の卵から雛鳥に、さらには親鳥へと成長してゆくために、自分の心・技・体をバランスよく伸ばしていってください。