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7/07/2012

スローイズムの薦め

初顔合わせの学生をこれまで3ヶ月指導してみて最近思うことは、スローフードならぬ「スロー音読」の大切さです。

スロー音読とは、ひとつひとつの音に必要な唇と舌とあごの筋肉の動きを確実に意識しながら、超高速カメラの映像をみるように、超スローで発音する音読のことです。

母音は母音の質を確かめながら(あいまいになっているか、アとエの中間になっているか、など)1秒、

摩擦音は呼気で生じる摩擦を感じながら1秒、

閉鎖音は確実に閉鎖しているのを確かめて閉鎖(つまり無音)時間を1秒、

近接音(=摩擦が起こらない程度に多少の狭めをつくる音= / w / / r / など) は、口内でどこにも接触がないことを感じながら1秒、

円唇化を伴う / r /  / w /などは、唇が丸まっていることを確認しながら1秒、

など。

超高速カメラ映像にはすべての真実が明らかにされてしまうように、スロー音読すると、それまで誤魔化していたいい加減な動きがすべて明らかになります

以前、水泳部の顧問をしている方から、競泳の練習として、できる限りゆっくりした動きで泳ぐ、という練習方法があるという話を聞きました。できる限りゆっくり、という制約があると、フォームが間違っている選手は沈んでしまうのだ、とか。それによってフォームの矯正を狙うということでしょう。

ウェイトトレーニングでも同じことですね。ある部位を筋力アップを狙うには、できるかぎりゆっくりした動きで、その部位の筋収縮を感じながら、その部位に意識を集中して、きちんとした動作でやることが大切と言われます。腕立て伏せも、いいかげんにチョコチョコ30回やるより、ゆっくりきちんと筋肉を感じながら10回やったほうがよいです。

結局、発音も筋肉の習慣づくりにほかなりませんから、他のスポーツの基礎トレーニングと共通部分があるのは当然ですね。フォームを作るときは最初はゆっくり、徐々にはやく、自動化を目指す。フォームが狂ったと思ったら、鏡を見ながら、時々途中で止めたりしながら、チェックする。発音筋肉も同じです。

音読指導のメリハリとして、部分的にでも取り入れてみてください。その時間でもっとも身につけたい1文だけをスロー音読する、とか。

ただ誤解ないように言っておきますが、「スローに読む」のと、「1語1語区切って読む」のは意味が違います。ここで薦めている「スロー音読」は、自然にリンクしながらまったく切れ目なく、自然なリズムで、しかし超スローに読む、という音読です。チャンクでくぎりながら、ね。

The point I'm trying to make

というチャンクなら、

theポ~インタイmtラ~インタメ~イk

のように、かためて、しかしゆっくり、(大ポンを3つ置いて)読むのです。

スロー音読とは意識が逆方向を向いているという意味でも、私は中学校でよく見られる、新出語を導入していきなりフラッシュしながら、テンポよくいい加減に発音していく「フラッシュ・カード音読」には賛成できません。

スローの大切さをわかった先生が、正確さを確認しながら徐々に行うスピードアップは意味がありますが、そうでないスピードには意味がありません。なんども素早く言っているうちに、細部もよくなる、ということは200%あり得ません。

低速の中にこそ真実があり、細部にこそ実力は宿るのです。

自転車で10mをどれだけゆっくり乗れるか、でバランス感覚は測れます。

スローイズム、始めましょう。

以前、友人に紹介してもらったおすすめサイトを参考に貼っておきます。ネイティブが思いっきり口の動きを強調して発音してくれています

http://www.sozoexchange.com/category/dailypronunciations/