m と b が発音できない人多し
ことしは自分史上では最高の総人数を対象に授業して、すべての授業でグルグルしています。
もちろんLができないとかRができないなどの学生はいますが、それは日本語との対照から予測できることですので今更、意外性はありません。
ことし意外性を痛感しているのが、mやb がきちんと発音できない(というか、しない)学生が結構多いのだな、ということです。発音できないというのは、両唇閉鎖音である(上下の唇を完全に合わせて呼気の流れを100%ストップする)これらの音を、閉鎖せずに発音する、という意味です。
以前から私は「ニコニコ女子」という呼び方で、ふだんからよく微笑んでいて、前歯が見えている女性は、日本語を話すときにもmもbも、labio-dental(上前歯と下唇によって)で発音するクセがついている、という現象を指摘していましたが、またそれとは違うようです。
男子も女子もかなりの率で、m や b で要するにいいかげんでそれっぽい音を出して済ましている者がいる、ということです。まったく閉鎖せず、唇と唇の間が5ミリも開いていたり、かろうじて閉鎖に近くとも、押し付けが弱いので空気が漏れているので、閉鎖音に聞こえないケースまで入れるともっと多くなります。
over the rainbow のなかの、dream や dreams の m で閉鎖がなかったり、 born this way の、my mama told me when I was young, we are all born superstars の、mama やborn
できちんと閉鎖しない、のです。
この件で、「mはこうやって閉じろ!」と、両唇をぎゅっとつまんでやった男子学生が今週だけでも何人いたことか。
もちろんmもbも、母語である日本語でもあるわけなので、これらは本人の母語の習慣の転移と考えるのが妥当でしょう。彼らは日本語もそのようにいい加減に発音しているわけです。これは、いかに母語は無意識に、そして場合によってはいい加減に発音しているか、という一般論になるのか、日本人だけの現象なのかは現段階ではわかりません。
(しかし、v と b が分化している言語であればこれは大問題になるはずなので、それがない日本語母語話者だけの問題である可能性のほうが大きいでしょう。ようは、rとlが分化していないのと同様、vとbも分化していないので、vがbになったり、bがv的になったり、ということかと思います。また、日本語の「ん」が、mもnもngもすべて含んで非分化だ、というのも関係しているでしょう。だから英語の語末で、nもmがごちゃごちゃなのだと思います)
わかるのは、いま私の前にいる大学生たちは、その習慣で中学・高校とずっと授業を受けて来ている、ということです。私にしてみると信じられません。中学などのもっともっと早い段階で、きちんと指摘して、習慣形成をさせて欲しいと思います。
中学、高校の先生、どうぞよろしく。頑張ってください。
よく、日本人の役者が英語圏の映画に出たり、日本人の歌手が現地で英語でレコーディングするときに、現地の英語コーチにいかに徹底的に発音を直されるか、というエピソードはよく聞きます。単にそのへんで買い物をする、友達と話す、というレベルを超えて、仕事で英語を使おうとか、英語圏で仕事を得よう、というレベルになれば、実はクリアな発音というのは本当に重要なファクターなのだと思います。
しかしこういう現象について、「国語」の先生はどう思っているんだろうねぇ..... 「日本語」の先生じゃないから関心ないのかな...