以前、その時点で授業を受けている学生から面と向かって「靜さん」と呼ばれ、ショックを受け、本人を叱責したところ、逆にその学生がショックを受けた、という事件があった。
今また、私に宛てた感想の中で、「靜さんの姿勢に感銘を受けました」といった表現をしてきた学生がいる。
目上の者にチャレンジする(喧嘩を売る)つもりで、自分と対等であるという意思表示として「さん」呼ばわりしてくるのであれば理解はできる。
しかし、大変お世話になりました、ありがとうございました、というメッセージの中で、30歳以上も離れた、しかも自分の「先生」を、「さん」呼ばわりする若者の、日本語感覚はいったいどうなっているのか。
その学生が今まで生きてきた20年余りの中で、それはおかしいと言ってやる大人はいなかったのか。
教える者と、教わる者。
その構図のなかで、教わる者が教える者を「さん」づけで呼ぶのは非礼であって不遜である、という感覚を持たない日本人がこれ以上増えるのは、少なくとも私には残念でならない。