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11/13/2010

電子辞書で用例を見比べる

紙の辞書でできて電子辞書にできないことはなく、逆はたくさんあるので、もう紙辞書はいらない、というポストに関して友人から以下のご意見をもらいました:

(1)電子辞書では、1番の語義での用例と2番の語義での用例を見比べる、ということはできないのでは?

(2)すくなくとも最初は紙の辞書を使わせて、辞書というものは語義、用例、成句などがこのように整理されているものだ、というのを理解させたほうがいいのでは?

これについて私の考えは:

(1)について:

要は、紙辞書は物理的に1枚の紙の上に、複数の語義に対応する用例が載っているが、電子辞書は同じスクリーン上には複数語義に対応する用例は載っていない、ということですね。

しかし厳密に言うと、紙辞書であっても、複数の用例を「同時に」見比べることは不可能です。

なぜかと言うと、人間の視野というのは実は驚くほど狭く、せいぜい10-15 character strokes
ひらたく言うと1~2語しか、ある瞬間に見る(見て読み取るほどきちんと見える、という意味)ことができないことが知られています。

すると、1文であっても全部を同時に見渡していることはなく、1~2語ずつ、順番に読み取っています。最初の1~2語を見てそれを短期記憶に格納し、その状態で次の1~2語に移り、それを短期記憶に格納しつつ、最初の1~2語と記憶の中で統合して意味を構築し、...という作業を瞬間的に次々に繰り返して読んでいるに過ぎません。

ということは、紙の上で上下に2~3センチ離れた箇所に印刷されている2つの例文を「見比べる」のも、同時に見ることはできず、上の例文と下の例文の間を秒単位で視線が行き来しながら、脳内で「見比べる」という意識が形成されるということです。

すると、これは電子辞書の2画面を行き来するのと本質的には変わらないことになります。そして今の電子辞書のレスポンスの良さを前提とすると、2画面を行き来して「見比べる」ことは十分可能だと感じます。

(2)について:

「最初は紙の辞書を使うべき」という論点ですが、これも「べき」とまでは思いません。辞書の構造を理解させるのは、電子辞書でもできますし、どうしても紙で一度説明したければ、ある見出し語に関わる全記述を1枚の紙に印刷して見せて、一度解説し、あとは電子辞書を使わせても問題ないのではないかと思います。

ただ現実問題として、最低でも数万円はする電子辞書を最初から全員に揃えさせることは無理ですから、現状としては、最初は紙の辞書を持っている生徒が多いことは間違いないとは思います。でも仮定の話で、今の性能と機能の電子辞書が、3000円で買えるならば、最初の段階から全員に電子辞書を使わせてもまったく問題ないと思います。

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すくなくとも私に関しては、紙の辞書に手を触れることは過去10年間ゼロになりました。

I am not really convinced by the argument that usage samples can be better viewed (and compared if necessary) on paper dictionaries than on electronic counterparts, nor do I buy the idea that beginners should get used to paper ones to get an idea about what a dictionary is like before beginning to use e-dictionaries.