また教育実習の季節である。
4週間後には研究授業を見てコメントしなければならないわけなので、研究授業で「見たいこと」「みたくないこと」を書いておく。
教育実習で一番大切なことはなにか? 生徒とラポールを作ること? 生徒の距離を適性に保つこと? 指導教員の先生の方針を理解してそこから逸脱しないこと? いい意味で楽しむこと? 心身の健康を維持すること?
これは「一番大切なこと」という質問がナンセンスなのだ。病気にならずに健康で4週間を乗り切ること、と、生徒との距離を適正に保つこと、というのはまったく次元のことなる話なので、「どちらがより大切か」ということを考えるのに適さない。
例えば、人間にとって一番大切なものは何か? というのも一種ナンセンスな質問であるのと同じ。ある次元では、「呼吸する空気があること」だし、また別の次元では「飲む水があること」だし、別の次元では「食べ物があること」だし、別の次元では「心のつながりがある友人や家族がいること」だし、別の次元では「収入を得る仕事があること」だし、別の次元では「人を愛せること」だし、別の次元では、「ヒトサマの役にたてること」だし、「思いやりがあること」でもあるし、さらに別の次元では、「子孫を残して遺伝子をとぎらせないこと」でもある。これらのなかで、「一番大切なものは何か」という質問は、ナンセンスである。空気と思いやりと遺伝子は比べられない。
ということで、英語の教育実習に関して一番大事なものは何か、という質問はナンセンスなので、しない。ナンセンスでないのは、たくさん大事なものがあるなかで、一般に教育実習生が、満足なレベルでできていないものは何か、という質問である。
オーラルイントロダクションのために魅力的なプ実物を用意したり、パワーポイントでスライドを作ったりする事に関して、満足でない実習生はいまどきほとんどいない。
インタビューゲームの設定がとてもマズイ、というような実習生もほとんどいない。
非常に多くいるのは、
(1)英語の発音がまずい実習生
(2)非文法的な文を言う実習生
(3)非文法的ではないが、状況として不自然な文(aというべきところtheを使う、またその逆など)を言う実習生
(4)生徒のひどい発音を直すどころか指摘すらしない実習生
(5)インタビューゲームで、生徒同士がワークシートを見せ合っていたり、ひどい英語でやりとりをしているのを放置している実習生
(6)授業展開のテンポが悪い実習生
である。
ということで、少なくとも私が関わった実習生には、せめて、(1)と(2)にだけはなって欲しくないと思う。つまり、自分で言う英語は、音声的にも文法的にもキチンとしたものであって欲しい、ということである。
それを超えて、生徒にうまく技量を伝えられるならそれは素晴らしいことだが、そこまでは期待すまい。そんなに簡単にうまくいく物ではないだろうから。しかし、せめて自分の口からでる英語はマトモなものであってほしい。
なんと控えめな願望だ、と思うだろうか。そんなことはない。この(1)と(2)だけでも達成できたなら、控えめに見積もっても今の現職教員の半分よりは上なのだ。