もうひとつ嬉しかったこと。彼が、
「先生が最近出された授業DVDのことは知っているのですが、それは敢えて見ないでいようと思います。」
と言ったことだ。それを見てしまうと自分が独力で自分の生徒のためになる授業スタイルを編み出し、確立する妨げになるのではないかと思う、というのだ。
その通り。まったく見ず知らずの人間ならともかく、2年半も授業で教えたのである。言いたいことはすべて分かっているはずだ。皆伝しているのだ。
この時点で会得できないなら、永遠にできまい。
どういう授業がいいかは、目の前の生徒に聞けばわかる。目が輝く方向にどんどん舵を切っていけばいいのだ。
今更他人の授業DVDなど見て、表面的にテクニックを盗むよりも、自分でそのテクニックを開発したほうが、よっぽど本物として使いこなせる。
車輪を再発明するのはよいことなのである。