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6/02/2019

英語教育における学習評価のあり方を考える:真に学習者が伸びる評価を目指して

2019年8月10日(土)に横浜国立大学で行われる関東甲信越英語教育学会第43回神奈川研究大会にて標記のタイトルでシンポジウムが開催されますが、そのパネリストの一人として登壇します。以下、私の発表の要旨です:

その場で評価して本人に伝えることこそ先ず必要ではないですか?
―「グルグル」メソッドの本質

靜 哲人 (大東文化大学)

キーワード:指導と評価の一体化、グルグル、即時評価


「評価」を広辞苑で引くと「①品物の価格を定めること。また評定した価格。②善悪・美醜・優劣などの価値を判じ定めること。特に高く価値を定めること。」とあります。evaluateLDOCEで引くと to judge how good, useful, or successful something isとあります。
これを英語教育そしてその日々の営みであるところの英語の授業に落とし込むならば、英語を生徒が聞いた時のプロセスおよびプロダクト、読んだ時のプロセスおよびプロダクト、話した時のプロダクト、書いた時のプロダクトについて、その質が非常に良いのか、かなり良いのか、まあまあなのか、いまひとつダメなのか、全然ダメなのかを、その場で判断することこそが評価の基本である、となるでしょう。そしてせっかくしたその判断はその場ですぐに当の生徒に伝えなくてはなりません。なぜならそれをしなければ時々刻々の評価は教師自身もすぐに忘れてしまい、生徒もその位置から向上するための手がかりがまったく得られないことになるからです。
たとえば生徒にコーラスであるいは個人で音読させた時、その音声の質がどの程度いいのか悪いのかについての教師としての「評価」を最低限でも瞬間的に伝達しなければならないはずです。その分節要素の発音に対して、あるいは文ストレスに対して、イントネーションに対して、声のトーンに対して、教師がどの程度ハッピーなのか、アンハッピーなのかを、たとえば表情によって、ジェスチャーによって、ある時は言葉によってまずは伝えなければならないはずです。生徒の一斉音読を聞いた瞬間に大げさに顔を歪めてみせる、「おいおい、勘弁してよ」という表情を見せる、質の悪い「音」がどの方向から飛んできているのかを見極める(=犯人探し)ために、それとおぼしき方向を睨んでみせる、そしてアドバイスの結果改善したならば「そうそう!そういうこと!」と嬉しそうにしてみせ、その良い方向を reinforce してやる、そういうことこそが評価の第一歩であり、指導者としての最重要任務であるはずです。
コーラスリーディングでは何もアドバイスせず、質の低い英語を「四方読み」でやみくもに繰り返させ、個人読みをさせてどんなに下手くそでもスルーし、授業の最後のロールプレイの発表がどんなにボソボソだろうが、どんなに母音挿入満載だろうが "Good job!" と拍手しかせず、最後の「振り返り」では「積極的にできた」などの非本質的なことしか記入させない . . . そういう授業を繰り返していて、生徒の英語がうまくなりますか? 心の中では誰でもわかっているはずです。外国語として教室でだけ英語を学習している日本の環境で、下手くそな英語を何度も「やりとり」しているうちに、魔法のようにいつのまにか自然にうまくなってゆくことはありません。可愛いい自分の生徒の英語を上達させてあげたい、と思いませんか?指導者として「指導」をしようではありませんか。指導すると生徒を英語嫌いにするのが怖いから、自分の前は目をつぶって下手くそなまま通過させますか? どこがどのように下手くそなのかも多くの生徒は気づかないまま卒業しますよ。それが the right thing to do ですか?
A teacher's gotta do what a teacher's gotta do. 日々の授業の中で本質的な意味で生徒を時々刻々「評価」しなければ、指導していることにはならず、結果的に、生徒の英語が上達することはない、と私は考えています。そういう教室での即時的な評価をシステマティックに行う、というのがグルグルメソッド, 2009)の本質です。本発表では、評価の意味を原点から考え直した上で、グルグルメソッドを効果的に取り入れるためのヒントをお伝えしたいと思います。

引用文献
靜哲人. (2009).『英語授業の心・技・体』東京: 研究社.