瞬間的に文法的な文を頭のなかで組み立てて、正しい発音とリズムで生徒に提示できるくらいの英語運用力がないと、実のある自己表現の授業はできない。
自己表現ということで、生徒にその場でなにか思ったことや、考えを英語で言わせる、というのはよくなされている。
で、当然、生徒が頑張って言う英語というのは、そのままでスバラシイ、ということはまず有り得ない。単語のチョイスが悪い、文法がおかしい、発音がまずい部分がある、あるいは、間違いはないにしても、スピードが遅すぎて、10語の文をいうのに20秒かかる、などなど。
そういう英語を言わせておいて、
Oh, I see. That's interesting!
などという内容に対してだけの(というか、内容もない)フィードバック(?)だけして次の生徒に移る、ようだと、英語の活動としては限りなく無意味に近い。
もちろん「英語で曲がりなりにも意見を言った」という体験をさせた、というだけの価値はあるといえばあるのだが、次の日に同じタスクをさせれば、必ず、また同じレベルの文を言うだろう。その次の日に同じタスクをさせれば、またまた同じレベルの文を言うだろう。
当然である。
こういう単語を使うといいよ、文法はこうしないとダメだよ、発音はこう直しなよ、もっとリンキングして言ってごらん、強弱リズムをこうするともっと英語らしいよ、という英語面のフィードバック、アドバイス、がないからだ。
私も大学生相手によくやるが、20秒与えて、考えを言わせ、20秒後には切り、お前の言いたかったことはこういう表現で、こういう言い方ができるだろ? ということで、同じだけの内容をもっと適切な表現で5秒で言ってみせ、
「はい、言ってみろ~!」
ということで、全員にリピートさせる(できるようになるまで、やらせる)というようなことを繰り返せば、だんだん伸びてゆく。
そういうアドバイスをしないと、せっかく「発表」しても、ほぼ時間のムダである。
で、そういうことができるためには、生徒に「自己表現」をさせたらそれを聞いてその場で同じ意味のモデル文を言ってやれる能力が不可欠だ、ということだ。
それができないなら、open-endedな「自己表現」などはさせてはいけない。害はないが、益もなく、時間の使い方としてまずい。 The time is ill-spent.
その時間を、どこかに書いてある正しい英文を read and look up させるなどの使い方をしたほうが、よっぽど力がつくのだ。
自由英作文をさせてなにも添削しないなら、